「香蘭!」


馬の嘶きとともに、聞き覚えのある勇ましい女性の声が聞こえて顔をあげた。


「華京様……」


「ハルから報せを受けてこちらに赴いた。これは一体どうなっている?鈴と香が戦っているなんて」


「お父様の軍をとめてください!今、この国を混乱させてはなりません!」


「わかった」


華京は手綱を引き、馬を走らせた。


「お兄様、お父様を探しましょう。探し出して、進攻を止めてもらわないと」


「香蘭」


珀伶は戦場の中に飛び込もうとする香蘭の腕を掴んで引き留めた。

彼は香蘭の腕を掴んだまま、眉を顰めて香蘭を見つめた。


「どうして止める必要がある?香はわたし達にとっては敵で、攻め落とすなら今ではないか?」


香蘭は兄の視線に、少し怯んだ。


「そうだけど……だけど、今はだめなの。わたしたちはまだ、この地に縛られているものを解放していないのですから!」


「何を言っているかわからないな」


珀伶は過去を見ていない。

香蘭はあのことをどう珀伶に伝えたらいいのかがわからずに俯いた。


そんな香蘭を見て、珀伶は苦笑して香蘭の頭に手を乗せた。