「今回のこと、本当はどう思ってるんだ?面白くないだろ、恋もしないうちにこんな男を夫にしなきゃいけなくなるかもしれないんだぜ」
香蘭はそれを聞いてくすくす笑った。
「ねえ、何をそんなに弱気になってるの?憂焔らしくない」
「俺にもこういうときだってあるんだよ」
ふん、と顔を背け、腕を組む憂焔に、香蘭は微笑みかけた。
そして何か思をいついたようで懐を探り、小さな銀色に煌めくものを取り出した。
「憂焔…、これをあげる」
「なんだよそれ?」
憂焔は目を細めて、香蘭の手のひらに転がっている銀色を初めて目にするもののように見た。
「鈴よ。鈴国ではね、大切な人に鈴を贈る慣わしがあるの」
「……貰っていいのか」
「ええ」
香蘭がにっこり笑って鈴を憂焔に差し出すと、憂焔は戸惑ったように瞳を動かしたが、銀色の鈴を受け取った。
しかし、それもほんの少し手にとっただけで、すぐに香蘭の手の中に戻してしまった。
「そんなに簡単に、渡すものじゃない」
そう言い残して部屋を出ていく憂焔の背中を、香蘭は止めることもできずに見送った。
手の中の鈴が、悲しげに煌めいていた。



