憂焔は昨日行った狩りのことを言っているのだ。
憂焔たちが狩りに行くと聞いて、一度狩りというものをしてみたかった香蘭は、無理を言って憂焔に連れて行ってもらったのだ。
それも、自分もしっかりと弓を持ち、鹿を一頭仕留めるという快挙をあげた。
香蘭は反論しようと思ったが、憂焔の言うことももっともなので肩を竦めた。
「確かに昨日はちょっとはしゃぎすぎたかもね。私、狩りがあんなに面白いなんてしらなかったんだもの」
「ふつうのお姫様は、狩りが面白いなんて思わないし、ついて行きたいとも言わないんだぜ」
憂焔がそう言いながらけらけらと笑い、香蘭もつられて笑った。
彼が笑うと自分も楽しくなる。
憂焔はひとしきり笑ったあと、ふいに真面目な顔になって香蘭の顔を覗き込んだ。
香蘭も笑うのをやめて、彼の琥珀色の瞳に映る自分を見つめた。
なんだか不安そうな顔をしているようにも見える。
明るい月の光が夜の庭を照らし、虫の鳴く声が辺りに響いていた。
しばらくそうしていて、やがて憂焔はふっと笑い背中を壁に預けた。



