その日も憂焔は昼間遊びまわったあと、香蘭の部屋にお邪魔していた。
侍女たちは憂焔の前で香蘭に恥ずかしい思いをさせたくて部屋にいたがったが、香蘭ではなく憂焔が人払いを行ったので、香蘭のときのように難癖をつけて居座るわけにもいかずに部屋を出て行った。
彼は香蘭の隣に腰を下ろし、皮の袋いっぱいにつめこんだ市場の戦利品を香蘭にお披露目してやっていた。
市場に行ったことがなかった香蘭は、袋の中から次々に現れる素敵な装飾品や絵、巻物などに目を輝かせた。
「これ、食べてみ?」
そう言って憂焔が差し出したものを、香蘭は首を傾げながら受け取った。
「なあに、これ」
「町の商人に貰った。俺もまだ食ってないけど、香蘭に一番に食わせてやるよ」
それは赤い、何かの木の実のようだったが、香蘭は見たことがなかった。
表面はつやつやと光沢があり、よく磨かれた玉のようにも見えたが、少し握れば潰れてしまいそうなほど柔らかかった。
香蘭は木の実をくるくる手の中で転がし、よく探ってみてから、一口齧った。
赤い果実の果汁が溢れ、口いっぱいに酸味が広がった。
香蘭は予想とは違った味に眉を寄せた。



