後日、王が言ったとおり香蘭のもとに香国の王子、憂焔が訪ねてきた。


「聞いていません、父上」


珀伶は腹を立てて鈴王につめよっていたが、王は何も聞こえていないというようなそぶりで憂焔を香蘭のところへ連れて行った。

香蘭は珀伶の裏切られたとでも言いたげな視線に胸を痛めたが、これも珀伶のためだと思って憂焔を部屋にいれた。


「はじめまして、憂焔王子。私は香蘭でございます」


香蘭が挨拶をすると、憂焔もそれに返した。


「こちらこそ香蘭姫。姫の兄上はおっかない人だな」


茶目っ気たっぷりにそう言われて、香蘭はくすくすと笑った。


憂焔は明るく気のいい人で、香蘭と歳が同じだったこともあり話も合った。

少し王子らしくないところもあったが、香蘭もわりと気にいった。


憂焔は鈴国とは少し形の変わった衣裳を着ていて、とても身動きのとりやすそうな柔らかい生地が使われていた。

そのせいでもあるのか憂焔はとても活発であったし、珀伶とも互角かというほどの腕の持ち主だった。


赤茶色の髪はこの国では考えられないほど短く切られ、肌は浅黒く、体つきもしっかりしていて、彼がどれだけ動き回っているかを物語っていた。


憂焔は数日間この城に留り、この国が珍しいことばかりなのか従者とともにあちこち飛び回ってはいたものの、城にいる間はほとんどを香蘭のところで過ごした。