「あ、ごめん手が滑った」


憂焔の手から湯呑が離れて、弧を描いて秋蛍の背中に当たる。


そんなに強い衝撃ではないが、秋蛍は不機嫌を顕わに起き上がり、二人はまた睨み合いを始めてしまった。


さすがに香蘭ももう耐え切れず、苛々と腰に手をあてた。


「二人とも、どうして喧嘩なんかするのよ。仲良くしてちょうだい」


香蘭がそう言うと、二人は揃って香蘭のほうへ顔を向けた。


「喧嘩などしていない」


「こいつが睨んでくるから俺も睨んでるだけだ」


そう言いながらも、まだ二人の間には電流が流れている。


「あらそうなの?それじゃあ」


香蘭は二人の腕を荒々しく引っ張り、二人を近くに引き寄せた。


「握手して。これからよろしくお願いしますって!」


二人は戸惑いながら香蘭の様子を窺っている。



「こ、香蘭?何をそんなに怒ってるんだよ」


「笙鈴!」