「ああ。この話はとても珀伶の前ではできない。あれはお前のこととなるとうるさいからな」
王はくくっと笑い、香蘭のほうに頭を近づけた。
「実はな、お前の嫁ぎ先を決めた。」
「えっ」
香蘭は目を見開いた。
あまりにも突然で、まるで冗談のようだ。
まさか、本当に冗談なのだろうかとも思ったが、王は冗談でもないようで話を続けていく。
「明後日、あちらの国の王子がこちらにこられる。お前を本当に妃とするか、見定めにくるのだ」
「……」
わかっている。
このようなときだからこそ話を進めたのだ。
香蘭が倒れて、使い物にならなくなる前に、利用してしまおうという魂胆だ。
「……相手は、どのような方なのですか」
香蘭はいずれこうなることはわかっていたし、あきらめて受け止めた。
王は香蘭の様子に満足したらしく、ひげを撫でつけた。
「相手は、香国の王子だ。お前と齢もかわらない。いい話だろう?」
「ええ、お父様。早くお会いしたいです」
「いい子だ、香蘭」
よほど機嫌をよくしたらしい鈴王は、珍しく香蘭の頭を撫でた。
娘の髪が短くなってしまったことに気にもとめないくせに、本当にかわいいと思っているかのように慈しむ。
香蘭は鏡台にある簪で鈴王の喉を刺してしまいたいと思ったが、そこはぐっと堪えた。
私はこの人のためではない、お兄様のために嫁ぐのよ……
自分が他国に嫁ぐことで、お兄様の未来も明るくなるのだとしたら、私はよろこんでお嫁に行くわ。



