「よし。それじゃ街に出るぞ。支度をしろ」


秋蛍の言葉に、香蘭とハルは顔を見合わせた。


「何をしに?」


流れに耐える訓練なら、街に出なくても宿の裏の森でやったほうがいい。


それに迂闊に街をふらついていてもし敵に見つかったりしたらどうするのだろうか。


立ち尽くす二人に、秋蛍は盛大にため息をついてみせた。


「そこの馬鹿ども。ここで顔も見せずにじっとしてたら宿屋の主人が訝しむだろうが。変な噂をたてられないためにも、顔は出したほうがいい。だからこれを用意したんだ」


そう言って、香蘭に何かを投げてよこした。


香蘭はいきなりのことに慌てながらもなんとかそれを受け取り、あっ、と声をあげた。




卵色に薄萌黄の格子模様が入った小さな着物。




「それをハルに着せてこい。外で待ってるから」


「あ、はい」


返事をする香蘭の隣で、ハルがむっと頬を膨らませた。


「あたし自分で着れるったら。何でこども扱いするのよ!」


「こどもだから」