「鈴国の王子から、報せはあったか?」


香王は果実が盛られた器から赤い実を一つつまみあげ、口の中へ放り込んだ。


側にいた宝焔皇子が、香王の問いに頷いた。


「はい。先程使いをよこしてこられましたよ。巫女は確かに宮の中にいたそうです」


「ほう。やはり」


機嫌よく頷く香王の様子を窺いながら、宝焔は続けた。


「鏡国へ間諜を出しておいて正解でしたね。華京王女が見知らぬ娘を宮の奥に匿っているという情報が入りましたから」


宝焔の言葉を聞きながら、香王はまた果実に手を伸ばした。


そして紫色をした大きなものを選びとり、齧りついた。


「お前は前からあの姫が巫女だと言っていたではないか。なぜあのまま憂焔の妃として嫁がせなかったのじゃ。もし殺されていたらどうするつもりだった?」


「あの優しい王女様が香蘭姫を殺すはずがない。それに今の彼女はまだ覚醒しきれていませんからね。そういう面倒事は、他人に任せておけばいいのです。きっと彼がうまく目覚めさせてくれるでしょう」


「彼?」