額に手をやりながら、藤松に下がれと指示をした。



藤松が去るのを見届けてから、珀伶は部屋の中へ入った。


そして壁に背を預け、ずるずると力なく腰を下ろした。



「間違いであればいい。そうであって欲しい……」



その呟きは、暗闇の中に溶けた。



障子窓の横にかけてある鈴がちりんと涼やかな音をたてて、珀伶は目を閉じた。


約束を込めながらつけてやった小さな鈴を鳴らして微笑む香蘭の姿が瞼の奥に浮かぶ。




死んだはずの香蘭の名前を、まさかこんな形で聞くことになるとは思ってもみなかった。




生きていたとしたら、嬉しい。


こんなに嬉しいことはない。



しかし、藤松の言っていたことがもし本当だとしたら、それはあってはならないことだ。



決して。



「香蘭」



珀伶は目を開け、拳を握った。



巫女を探そう。



巫女を見つけ出し、この目で確かめる。




握りしめた拳を開き、ゆっくりと立ち上がった。




「必ず、この手で。」