くるりと香蘭に背を向けて、部屋を出てしまった。
そう言われるだろうとは思っていたけれど、憂焔に別れを告げられないのは悲しい。
肩を落として秋蛍のあとを追うと、ハルが香蘭を心配そうに振り返った。
「秋蛍のけちんぼ。リンがかわいそうだよ」
「何とでも言え」
「じゃあ、鬼畜」
ハルの頭を小突いてから、秋蛍はそういえば、と歩きながら香蘭を振り返った。
「鈴、お前は今から名を笙鈴と名乗れ」
「え?」
笙鈴?
香蘭は首を傾げた。
それは確か、巫女の名前だったのではなかっただろうか。
「敵を欺くためだ。さっきの鈴の者がお前の気配を知っていたとしたら、鈴が反応した巫女の正体がお前だと知られたかもしれない。もしそうだとしたら驚いただろうな、まさか自分の国の姫が、こんなところで」
「お黙り秋蛍!」
ハルが一喝し、秋蛍は不満そうにしながらも口を噤んだ。



