いつまでもここにいられるわけではないわ。


いいえ、いっそのこと抜け出したい。


抜け出して、私の好きに生きたい。




お父様も、邪魔な私のことなど早くお捨てになればいいのに。




そういった不満が頭をめぐるが、香蘭も薄々利用価値に気づいてはいた。



きっと遠くの国の皇子と政略結婚させるつもりなのだ。


政治の道具として。



―――それが卑しい身分の母を持つ私の、唯一できる力助け。



ぽつぽつと星が現れてくるような暗さになって、香蘭はようやく障子を閉じた。


最近、夜の闇が辺りを覆うと、香蘭は耳鳴りがするようになった。


昼間の眩暈だってそうだ。


別に月のものが来ているというわけでもないのに、くらくらと世界がまわる。


香蘭はそのことが侍女に知れないように、必死で倒れまいとしてきた。

倒れたら彼女たちは喜んで香蘭の“お世話”をするのだろうから。


しかし今日は、耐え切れなかった。


日に日に眩暈がひどくなっていると香蘭は感じた。

病にでも侵されているのだろうか。


それならそれで別に構わない、と香蘭は思った。





王に利用されてしまうくらいなら、何も利用されないうちに死んでしまったほうがいい。




香蘭はそう思いつつ、止まない耳鳴りを気にしないようにしながら寝具に身を預けた。