ひっそりと

冷たい空気が流れる、

誰もいない家。


私はあの後、

澪と別れて1人電車に

揺られて帰ってきた。


まだ考えのまとまらない私を

澪は心配し、

「一緒に帰ろう」と

申し出てくれたのだけれど、

これ以上、澪の優しさに

触れてしまったらいけないと

心のどこかで感じ、

不器用な笑顔を見せて

店を出てきた。


自分の部屋に入って

カーテンを開ける。


そのままベッドに

横になろうかと思ったけれど、

思い直して反対側にある

机に向かってちょこんと座った。


ベッドには幼い敦が残した

メッセージが刻まれている。


今、その近くへ

行ってしまったら、

私の心がまた揺れ動いて

しまいそうだ。


小さく一つ息を吐くと、

机の上にあるパソコンを

立ち上げた。