「おーい、冬花《ふゆか》。」

後ろから聞こえてくる声に雪野冬花《ゆきの ふゆか》は
坂を登る足を止め、振り返る

そこには私に手を振りながら、小走りしてくる同じ制服を着た少女が見えた


彼女は私の隣まで来て微笑む

「おはよう。」

「おはよう、美咲《みさき》。」


彼女は私と同じ高校に通う親友

花園 美咲《はなぞの みさき》

容姿端麗、運動神経抜群、いつも明るく笑顔
栗色をしたサラサラなボブに小さな顔
大きな目が特徴の学校のアイドル

誰にでも優しく、男女かまわず呼び捨てなのも人気の1つで
美咲のファンクラブまであるって話を聞いたことがある。


相変わらずスベスベの肌とサラサラの髪だなと
見とれていると、急に美咲がスマホのカメラをこちらに向けて

撮られるっと思った時には既に遅かった

「ふふっ。桜と冬花のかわいいショット頂きました!」

「ちょっと・・・・。美咲っ。私が写真苦手なの知ってるでしょ・・・。」

「知ってるけどー。こんなかわいい冬花を残しておけないのは無理!
ってことで諦めなさーい。」

うぅっと恥ずかしさで唸り俯く私を他所に、美咲は上機嫌のようで鼻歌を歌っていた

私は美咲みたいにかわいくないのにな・・・。
それなのに美咲はいつも私をかわいいと褒めては写真を撮ってくる

最初の頃は嫌すぎて涙目になっていたが、
最近は少し諦めてきていた

写真を撮った後美咲、すごく嬉しそうなんだもん。

「わっこんな時間!冬花、ちょっと急ごう。」

「うん。」

私たちは長い桜並木の坂の上にある高校へ急ぐ

この後、私達の人生を変えるような出会いが
あるとは誰も思いはしなかった。


ねぇ、神様。


これはあなたの意地悪ですか?