Material Boy


「乗り変えって、まだなんにもないでしょ私たち。

 あなたはふざけてばっかりで

 ちゃんと私に好きって言ってないじゃない。

 そんな人の言葉信じられない。」


野乃を抑えていた遥火の力が抜けていく


見上げた野乃に映ったのは悲しそうな顔。


「信じてもらえないならしょうがないね。」


そのまま野乃のそばを離れていった。


「どこ行くのよ!」


「頭冷やす。」

振り返りもしないで右手をひらひらして歩いて行ってしまった。


「馬鹿っ!!あんたなんか大っきらい!!」


追い討ちをかける私の言葉を遥火はどう思ったのだろう。


人の波に飲まれて見えなくなった背中に向かって、


何度も馬鹿ってつぶやいた。


好きって言ってもらいたいだけなのに

そんな顔するなんて私が悪いみたいじゃない。



ずるいよ