Material Boy


二人で最後に仲野さんに挨拶をして商店街を後にする。

約束通り、コロッケのお土産をたくさんもらった。

野乃は、打ち合わせに手ごたえを感じて、

思いのほか上機嫌だった。

「ふふ、コロッケいっぱいもらっちゃった。室長と営業部に差し入れようか。」


「野乃。仲野さんてお前に気があるんじゃね?」


「滝沢さん鮎川です。

 それから「じゃね?」は禁止。」


「ああ、鮎川さん、仲野さんはあなたに気がある。」


「そうかしら、まあ、嫌われてはいないでしょうけど。

もしそうだとしたら、滝沢さんがしてくれたお化粧のせいね。

今まで、そういう対象になったことないもの。」


「そういうって?」


「恋愛とか、付き合うとかよ。」


「嘘だろ?」

「武装してたもの。ほら、鎧。」

両手で親指と人差し指で〇を作って目の前に当てて見せた。


「前にも言ったけど、

 顔だけで寄って来られたり評価されるのはもう沢山なの。」