『いいよ。お前気に入った。

鮎川野乃、俺の女になれ。

俺がお前を変えてやる。』

そう言って抱きよせた遥火の言葉と、

『君も主任という責任の上で、企画を進行してもらいたい。』

と言った社長の言葉が野乃の頭を占領していた。

ぼんやりと、会議用の企画の資料をそろえようとしていたが

どうにも作業が進まない。

「ののちゃん、お昼にしない?」

後ろから声を掛けたのは、いちごだった。

「ああ、そんな時間ですか。」

「一緒に食べない?母が皆さんでって届けてくれたの。」

大きなク-ラ-バッグから出てきたのは、

おせち料理ばりな行楽弁当だ。

「凄い、豪勢ですね。」

「今日は撮影で作ったらしいの。見た目だけかもよ?」

くすくす笑いながら椅子を用意してくれた。

室長の母親は今をときめく料理研究家だ。

料理教室をいくつか経営しながらTVでも引っ張りだこ。

まさか二日も続けてそんな人の食事を戴けるなんて。