室長の母親に促され、そのまま夕食まで同席させてもらうことになった野乃は、

鳴海家といちごの普段の様子を目で追っていた。

野乃は社長室に呼ばれて以来、

室長の観察をするのが癖になっていた。


室長、鳴海いちごと配偶者、鳴海守貴は30歳。

市役所の職員であり、実家も普通の一般家庭。

何故彼と結婚に至ったのかは分からないが、

現在、小畑家の離れに間借り中である。

デキ婚でも政略結婚でもないのに、こんな早く結婚するのを不思議に思ったが、

室長同様、人を引き付けるオ-ラを持っている。

家での室長は幼さが際立つ、

話し方も語尾が上がる女子高生のような話し方をする。

これが彼女の素なのだとすると、

会社での、立場上背伸びした振る舞いは必死で作っているのだということだ。

それで、あの程度、、

彼女が社長になる日なんて、ホントに来るのだろうか。

まるで保護者のような気持ちで室長を眺めていた。