Material Boy

「いつから、そんな話になってたの?」


「アメリカに出張に行った時から、そんな話は出てた。」


「そっかぁ。」


「野乃。俺向こうのの暮らしの方が多分合ってる。」


「そうね、遥火日本語の使い方変だし、

 向こうで暮らしたほうがいいよ。」


「でもさ、野乃がいないんだ。」


「私なんかいなくったって困らないでしょ?

 元々向こうで一人で暮らしてたんだもん」


「野乃?」


「私だって、夜中にこんなふうに突然来られることもないし、

 帰ってこなくて心配することもなくなる。

 前の暮らしに戻ればいいんだもの。」


「野乃!」


「よかった。

 もう、遥火の面倒見なくっていいもの。

 自分のことだけ考えていられる。」


「野乃!」


腕を掴まれた瞬間に、

ばたたっと大粒の涙が落ちた。