「変ね…。風かな?」






まぁいっか。






広い神社はもう暗い。
灯りは家と灯籠ぐらい。




神社=家
そんな特殊な暮らしだったからか大抵は怖いものはなかった。
普通なら暗い神社内を彷徨くなんてしないはず…。





「今日は曇ってるな…。」





生ぬるい風が嫌で家に戻った。





鳥居で何かが見ているのに気づかない。






数珠は仄かに光る。






向日葵は見ていた。
鳥居に立っていた何かを…。
にっと口元が笑うと影は消えた。






******






「えぇー!巫女…。あの巫女ですか?」






「かなこ…。声がデカイよ。」





「ごめん私パス!」






「バイト代弾むから~。」





「かなこはやるよ!」





おぉー!かなこ!ありがとう。





「一回やりたかったんだ!」





「まり~。」






「ダメ。私は祭を楽しむのだ…。ふっ…。悪いな。」





ポテトをカッコ良く??食べながら断る友…。誰のマネですか?!





「お祭り、そういえば…。デートはしな…。」
慌ててまりは口にポテトを押し込む。




「ばか!かなこ!」
かなこはポテトでモゴモゴしていた…。





苦笑しながら。
「んー。まだ言ってないし…。きっと…。」






「僕と行こう。」




振り返り…。
手からポテトが落ちる。
「レン君!」






回りがざわめき黄色い声が聞こえた。





ど、どうして…。
「私家の用事があるから遊べないの…。」
やっとつぶやいた。






「お祭り夜までやってる?用事終わるまで待ってるから。」





そして、私のジンジャーエールを飲み干した。






あっけに取られていると。





「ありゃ本気だな。」






「かなこもそう思う。」




あぁ…。どうしよう。






「さゆりはっきり言わないと危ないよ。」






「うん。」






だけどその後、いくらレン君を探しても見つからなくて。
緑の君もあれから姿が見えなくて…。






祭りが来てしまった…。