上弦の月…。






屋根の上で一人静かに見上げた。
彼女は下で寝息をたてる。





「狙いは俺か…。それとも…。」





さゆりにだけは危険にさらしたくない。





まさか嗅ぎ付けて来るとは思わなかった。
こんなところまで…。






一族の…。全てがついて回る。






「一緒にいられないのか?」





彼女は願った。一緒にと…。
だから…。誓った、君を守ると。





「君を守るから…。きっと。」





気配がする。






「来るなら容赦しない。」





神社に張り巡らした無数の糸が守りを固める。






「俺も臆病になったな…。」
苦笑しながら。彼女の元に舞い降りる。






そっと口づけ見下ろした。
無防備な姿は…。






顔が歪んでいた…。






「緑の君…。」






「!」






手を握りしめるも、寝息が聞こえた。






「おやすみ。さゆり…。」





窓から飛び降り。神社の林に消えていく。