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苦しい…。私何処にいるの…。





纏わりつく赤い羽根に溺れていく。
身体は埋まって…。息をするのが精一杯。





藤乃の声が霞んで聞こえなくなって…。





上から藤の花びらがひらひらと落ちては消えていく。





目の前に白い糸が見えた。




身体の力が抜けていく。
まるで何かに吸いとられてるみたい…。





白い糸が見えた。
手を伸ばしたいのに動かない。
それを掴まなければならないと何故かわかった。




糸の上からキラキラと光が落ちてくる…。





あぁ…。綺麗…。






目を閉じかけた…。






「さゆり…。さゆり!」





握ったのはキラキラと煌めく緑の長い髪…。





「緑の君?」






抱きしめられていた。





「此処から出る。」





何時でも助けてくれるのは…。日陰から連れ出してくれるのは…。貴方しかいないんだね。





真剣な眼差しをしていた。
出口は一つ…。





大量の一面の赤い羽根がさゆりを捕らえていた。


赤が濃くなり二人とも覆い尽くしていく。





「さゆり…。」





真剣な眼差し…。





それを受け止める。






「貴方を信じてる…。」





それしか道はない…。
覚悟なんてあの時から出来てた。





「緑の君を信じてる…。」





全てが覆い尽くす瞬間、首元に深く差し込まれた痛みがあった。





緑の輝きが大きくなり唯一の出口に続く糸を上がって行く。
赤い羽根を退けながら…。
それを藤の花びらが囲んでいく。





歌が聞こえた。
遠くに遠ざかっていく。




魂は鳥籠から出ていく。





小刻みに痙攣していた。身体が光を放ちながら止まる。





何かが弾ける音が響いた。





刀を構えながら跳び避ける。





赤い翼の妖しが膝を着いた。





「おのれ…。二度までも…。」





身体に魂が戻る。






目を開ければ赤い翼の妖しがいた。





「スーリア!」






振り返ってみるとボロボロのレンがいる。





「レン君…。あっ…。あっ。」





身体に力が入らない。






「緑の君?」






何処にも姿はなかった。





「愚かなり…。」
身体を引き寄せられる。