赤い翼の妖かしが牙を剥く。





そんな時だったのに私は空を見上げた。大きな雲が消えていく。





見えたのは月…。あれは…。あれは…。





「どうして…。」





緑の君…。あれは…。





雄叫びのような声が神社に響いていた。





緑色に輝く長い髪。妖しく光綺麗なエメラルドの瞳…。あれは…。





でも…。月は三日月だった。上弦の月…。





我を失ったかのように赤い翼に飛び掛かる。
羽根が飛び散る。
爪と牙が交錯する。





羽根が刃のように襲いかかるも緑色の髪が数本ハラハラ落ちる。





「アキラ…。」






「レン君!」






肩を庇いながらよろよろと立ち上がる。





「スーリア…。血を…。」





驚いているとレンが手首を掴んだ。





「放し…。」






数珠が光を帯びる。






「君は僕が守る…。」






「?!」





抱きしめられていた。





光が小さくなると…。





「いつでも呼んでくれ…。」





瞬きするともう鳥居の上で剣を構えていた。
赤い翼の妖しに向かっていく。





心臓がまだどくどくと音がしていた。
緑の君…。
私は…。緑の君が好きなのに…。





輝く銀の糸が月でキラキラとしていた。





糸のトラップが発動し、赤い翼の妖しの動きを止める。





白い影が剣を提げ降り下ろされる。
翼が片方落ちる。





どさりと嫌な音が響いた。





鳥が消えていく。






私を見ていた。
しっかりと…。
そして、笑っていた。





恐怖に悪寒が走る。






「これで終わったと思うな…。人間…。」






白い影が立ちはだかるも赤い翼の妖しは笑っていた。





笑って…。完全に消えてしまった。






「逃げたか…。」






レンが刃を構えた先は…。





「アキラー!」






緑の君に変わる。






白い影と緑の輝きが神社に影を落とす。





藤の華ビラが風に舞い上がる。