世界の終わりに、君は笑う




「ねえ! ディオンってば!」

耳元で叫べば、ようやく二人の方へと目を向けた。

「何か言った?」

「だから、フェイも私もアウリスの人々を助けに行くけど、ディオンはどうするのって訊いてるの」

「……僕も行くよ」

「お前にとって、身の危険が多い所だぞ?」

「ああ。でも、行くよ」

その言葉が、意外だった。妖精への手助けは進んでやるが、人間へはしない。
そんなディオンが、危険が多いのにも関わらず、アウリスへ行くというのだから、二人は一瞬目を見開いた。

「人間のことも、助けてくれるようになったんだね」

嬉しそうに、アンネッテはにこにこと笑う。

「僕は……」

ダスティを殺したいだけだ、と言いかけたのをやめる。
アンネッテの笑顔が、いつもとは違った。
その笑みに、何かの思いが隠されているかのように見える。

「ディオン?」

黙り込んだ彼を見て、フェイは不思議そうに首を傾げる。
どうやらフェイはアンネッテの些細な変化に気付いていないようだ。
いや、それともディオンの思い違いだろうか。