「先にアウリスへ行く。けれどセリシア、俺は再びお前を見つけ出してみせる。そして、お前の兄である、〝Ⅰ〟も」
その瞳を見て、セリシアは口の端を吊り上げて笑う。
「君が〝Ⅰ〟と出会うのを、楽しみにしているよ
」
あ、それから、と続ける。
「国王に雇われている傭兵……確かエルヴィスとか言ったっけ。アイツは、あまりなめない方がいいよ」
それじゃあね、と言って、セリシアを乗せた鴉は、空の彼方に飛んでいった。
「俺は今からアウリスへ行く」
「私もついて行くよ。国民を犠牲にするなんて、許せないわ」
その言葉に、ありがとう、とフェイは言う。
「ディオン、お前はどうする?」
きっとダスティも精霊使いの力を欲しているだろう。
アウリスへ行けば、レクスの連中も多くいるに違いない。
ディオンにとっては、危険が多すぎる国となってしまったのだ。
「………」
まるでフェイの声が耳に入っていないかのように、ディオンは反応しない。
「ディオン、聞いてる?」
今度はアンネッテが訊く。
それでもやはり、ディオンの耳には届いていない。何か思いつめている様子だ。


