「なぜ僕らを此処に導いた」
黙り込んでいたディオンが、口を開(ひら)く。
セリシアはディオンを見て微笑んだ。
「アウリスの国王――ダスティに逆らった騎士が、どんな奴か見てみたくてね。人間なんて欲深いくせに、フェイ・ブランデルは人工精霊の力を欲しようとしなかった。だから気になったんだ」
まあ、慈悲深い奴で呆れたけどね、とセリシアは続けた。
「いいことを教えてあげるよ」
フェイに向かって言う。
「人工精霊は、月食のときに目覚めるのさ」
「月食、だと?」
それは七日後じゃないか。
「レクスの奴らも、ダスティも、必死こいて僕らを捕まえようとしているんだ」
ケラケラと、セリシアは笑う。
「僕らの中で眠る漆黒のワイバーンが目覚めしとき、僕らの計画は、実行される」
「計画?」
アンネッテが訊く。
「この世界から、人間を消してあげるんだ」
アンネッテもフェイも、言葉を失った。


