「あなたが、双子の片割れ……」
〝Ⅱ〟ということは、妹の方ね。
じゃあこの恐ろしい何かの力は、彼女の中で眠る人工精霊――漆黒の飛竜(ワイバーン)の力ということ?
「フェイ・ブランデル、お前も僕らを捕まえようとしているんだよね」
フェイの返答を待つ間もなく、続けて言う。
「でも、無駄だよ。誰も僕らを捕まえることは出来ない」
「セリシア、俺は人工精霊の力が欲しいんじゃないんだ。俺はただ……」
「僕ら双子を殺さずに、人工精霊を消したいんだろう」
なぜ、そのことを知っているのだろうか。
「そんなこと、無理だよ」
「はじめから無理だなんて言っても……」
「そんな好都合な方法があるのなら、僕らだってとっくにしてるさ」
セリシアがフェイの声を遮った。
「つい最近僕らの存在を知ったばかりのお前に、一体何が分かる」
十年という長い年月の間、双子はただレクスから逃げ続けていたわけではなかった。
セリシアの口元は、笑っていない。


