世界の終わりに、君は笑う





「あなたが殺したのね」

アンネッテの声は震えている。
黒猫から感じる恐ろしい何かの力は、その者から放たれているものだった。

ディオンではなかった。
そう確信されたのに、それでもディオンに対する不安は消えない。

「ああ、そうだよ。僕が殺した。だってアイツら、僕を捕まえようとするんだもの」

一息ついて、また言葉を続ける。

「僕を捕まることなど、出来やしないというのに。レクスの奴らって、本当に愚かだよね」

その者は薄ら笑いを浮かべた。

 あの死体は、レクスだったのか……。
 だったら、今目の前にいるアイツは、精霊使い……もしくは――。

「お前は一体……」

「ああ、自己紹介がまだだったね。僕はセリシア」

それは、まったく聞いたことのない名前。

「あ、こう言った方が伝わるかな。――レクスに〝Ⅱ(セカンド)〟と呼ばれし者」

フェイもアンネッテも、目を見開けた。
セリシアは黒猫の頭を撫でている。
その右手の甲には、精霊使いである証の紅い紋章があった。