とてつもなく恐ろしい、何かの力。
今感じているのとまったく同じものを、以前にも感じたことがある。
『だ、大丈夫!?』
エルフの里で、苦しがるディオンに駆け寄り、触れたときだ。
あのときも、今のように恐ろしい何かの力を感じた。あれ以降、ディオンから感じられるは精霊使いの力だけ。
そのため、アンネッテはあのときのことをあまり深く考えはしなかった。
どういうことなの?
あの獣を生み出したのは……ディオン?
でも、それだったらディオン本人からも、恐ろしい何かの力が放たれるはず……。
そんなことを考えあぐねているうちに、黒猫は動き出した
。固唾(かたず)を呑んで、その姿を見守る。
三人の横を通り過ぎ、前へと進み続け、ぴたりと止まる。
そして、顔だけを振り向かせた。
その目はまるで、〝ついてこい〟とでも言っているかのようだ。
そして再び、進みはじめる。