* * *

フェイの家は他と比べ広い方だったが、家の中にある物は必要最低分な物ばかりで、質素だった。少年はソファに座り、じっとしている。

「ところで、名前は?」

紅茶の入ったマグカップを渡し、フェイもまたそれを片手に持ち、椅子に腰を下ろす。

「ディオン・クロズリー」

紅茶を眺めながら、答えた。

「ディオンか。俺は……」

「フェイ・ブランデルだろ。この国で一番の剣術を持つ者だからな。名前くらい知ってるさ」

そうか、とフェイは言う。
しばらく二人の間に沈黙が流れた。

「お前は、国王を尊敬しているのか?」

先に口を開(ひら)けたのは、ディオン。

「当たり前だ」

誇らしげに、フェイは続ける。

「ダスティ陛下は民(たみ)の平和を一番に考えているお方だ。だから、俺は彼に従おうと決めた」

不快そうに、ディオンは目を細める。

「民の平和を一番に考えているだと? 何ともくだらない冗談だ」

「なんだと?」

無意識に、声が低くなっていた。