左手の手套(しゅとう)を外し、綺麗に巻かれていた包帯も外していく。
「その紋章……お前、精霊使いか」
手の甲にある、契約の証(あかし)。
それは薔薇(ばら)よりも紅く、麗しい。
〝 精霊使い〟――それは精霊が見えることはもちろん、それらを操ることすらも出来てしまう者のこと。
産まれたときには、すでにその紅い紋章が左右どちらかの手の甲にある。
精霊使いは稀(まれ)な存在であり、まさに選ばれし者なのだ。
「精霊と心を通わすことが出来るのは、精霊使いだけ。普通の人間は精霊の言葉が分からないし、またその姿を見ることも難しい。だから多くの者たちは、僕ら精霊使いの力を手に入れたがるのさ」
「つまり、お前は狙われているということか」
あぁ、と彼はうなずいた。