人気(ひとけ)のない場所へと行き、太い木にもたれながら、ずるずると座り込む。
どくん、と心臓が大きく脈打った。
胸の中を襲う痛みに、ディオンは耐える。
「レクスが開発した、電波を発するあの機械……アレは厄介だよ」
そこには誰もいないというのに、まるで誰かに話し掛けているかのようだ。
しばらくして痛みが治まったのか、息をついて、紺碧(こんぺき)の空に浮かぶ半月を眺める。
「妖精の魂を使えば完璧な人工精霊が造れる、だってさ。馬鹿馬鹿しい」
首から掛けているペンダントを取り出す。
埋め込まれているのは、青色の閃光(せんこう)を放つ月の石(ムーンストーン)だ。
「それ、綺麗ね」
目を向けば、少し先にアンネッテとフェイがいた。
「微かに声が聞こえていたが、誰かと話していたのか?」
「空耳だろう。僕は何も喋っていない」
「そうか」
ディオンの声だと思ったんだけどなあ、と呟きながら、フェイは不思議そうにしている。
「そのペンダント、もらった物なの?」
アンネッテが傍に座る。ああ、と答えた。