「〝アレ〟とは?」

ディオンの問いに、長老は細い目を閉じる。

「手のひらほどの大きさをした機械だった。何の機械かは分からない。だがその機械が起動した途端に、頭が割れるほどのひどい頭痛が襲い、息苦しくなったのだ……」

エルフだけでなく、近くにいた多くの妖精たちもその被害を受けた。
それが原因で、エルフ以外の妖精は違う場所へと逃げてしまったらしい。

「わしらが苦しんでいる間に、レクスの者たちは次々と子どもを連れ去っていった」

眼鏡をかけた男は、苦しむエルフたちを見て高々と笑った。

『人間に抗った愚かな妖精に、最後のチャンスを与えてやろう。三日後に餓鬼(がき)らを連れて再び此処へやって来る』

「三日後……ということは今日か」

そのせいで見張りの者たちは冷静さを失い、ディオンが精霊使いだと気付かなかったのか。