「なぜ子どもたちが人質に?」
長老の家は、どこか懐かしさを感じるものだった。
椅子に座るやいなや、ディオンは訊(たず)ねる。
「三日前のことだ……」
数十人の人間が、突然この里へとやって来た。
『我々はいずれこの世界を支配する組織――レクスである』
眼鏡をかけた一人の男が、言った。
『確実に人間の目にも見える唯一の妖精は、お前たちエルフだけ。そして我々は、妖精の力を必要としている』
『我らエルフに、何をしてほしいというのだ』
ニヤニヤと、レクスの者たちは笑う。
『お前たちの魂を我々に与えてほしいのだよ』
『魂、だと?』
『ああ、魂だ。妖精の魂を使えば、今度こそ完全なる人工精霊が成功するはずなのだよ』
『人工精霊だと? それは掟に反していることではないか! 魂など決して渡すものか。ただちにこの里から立ち去れ!』
『そう言うのならば、仕方ない』
〝アレ〟を出せ、とその男は仲間の者に言った。