「だから待てと言ったのに。もし斬られていたら、どうするつもりだったんだよ」
軽々と、フェイは相手の剣を払う。
「お前という護衛がいるからな。そんなことは考えていない」
その無防備さに、ため息をつく。
「も、申し訳ありません! あなたが精霊使いだと気付かずに、私は無礼なことを……」
取り乱していたエルフが、深く頭を下げている。
どうやら妖精などは紅い証(あかし)を見なくとも、その者が精霊使いであると分かるらしい。
「近付けば近付くほど精霊使いの力を強く感じるというのに、お前たちは気付かなかった。それほど冷静さを失うなんて、エルフにしては珍しい。一体何があった?」
二人のエルフは、悔しそうに顔をしかめる。
「レクスという組織の者たちが、子どもたちを人質にしているのです」
「レクスだって?」
ディオンより先に、フェイが答えていた。
「わしが説明しよう」
そう言いながらやって来たのは、長い髭(ひげ)を生やしたエルフ。
「長老さま!」
慌てて二人のエルフは頭を下げる。
「わしの家で話そう。こっちじゃ、ついて来い」
その言葉に、里の中へと入る。エルフたちはみんな、悲しい顔をしていた――。