「……可笑(おか)しい」

なぜかディオンは眉を顰(ひそ)めている。

「何が可笑しいんだ?」

「他の妖精がいない」

いつも遊び回っているいたずら好き(ピクシー)ですら、一人もいない。

「とりあえず、里へ行くぞ」

門にいる見張りの男が二人、フェイとディオンを鋭く睨みつけながら、身構えている。

「入れそうな雰囲気じゃないな……っておい、待て、ディオン!」

「五月蠅い。さっさと来い」

見張りの者たちが今にも襲い掛かろうというオーラを発しているのにも関わらず、堂々と進んでいく。

「近寄るな!」

一人のエルフが叫ぼうと、それでも足を止めない。

「おのれ!」

剣が、振り翳(かざ)された。

「お、おい。落ち着け」

もう一人のエルフが止めようとしたが、時すでに遅し。
ディオン目掛けて、勢いよく剣が振り下ろされる。
キィン! と、金属音が辺りに響いた。