エルフは明るい所を好むと、本に書いてあったのだが……。

周囲を眺め回しても、不気味な木々に囲まれた道が続くのみである。
決してエルフの里があるとは思えない。
精霊使いであるディオンの方が、妖精の居場所に詳しいことは断然なのだが、不安を隠せなかった。


「そういえば、どうしてお前はレクスのことについて、そんなに詳しいんだ?」

別に、ディオンが元レクスの一員だったとは思っていない。
けれどやはり気になって仕方がないのだ。

「旅をしていれば、そんな噂話などいくらでも耳に入るものさ。ただ、偶然にレクスの噂話を多く聞いただけだ」

「へえ」

 そんなものなのか――。

「見えてきたぞ」

指差す方向に見えるのは、太陽の光。
どうやらもう少しでこの森から抜けられるようだ。
無意識に歩くスピードが速くなる。


「――あれが、エルフの里」

薄気味悪かった森とは打って変わり、優しい日の光を浴びる場所へと出る。
先の方には、湖に囲まれた里が目に入った。