「は? じゃない。周りを見てみろよ」
ゆっくりと、湖の方へ目を向けてみる。
「――あれは……」
金糸の髪の美しい女性が、ハープを弾いている。
先ほどまで、そこには誰もいなかった。
「彼女が……グウレイグ」
羽を持った小さな妖精――ピクシーが、彼女の周りで踊っていた。
感動のあまり、キスされたことすら忘れてしまう。
「フェイ。お前、僕と一緒に来ないか」
え? とディオンを見る。
「僕と一緒に旅をしていれば、妖精や精霊を見ることが出来るぞ。それにお前は強いからな。護衛となってくれれば、僕としても助かる」
「お前、弱いのか」
「失敬な奴だ。僕は精霊や妖精を扱えるからな、それなりに戦える。けれど精霊たちを戦いの道具にするなんて、好ましくないんだよ」
それから…、と嫌そうに続ける。
「僕は魔力を持っていない。その原因は、きっと僕が精霊使いだからだ」
「精霊使いとして特別な力を手に入れる代わりに、魔力は奪われたということか」
だろうな、とディオンは答える。
「けれど、俺は人工精霊と契約した双子を捜さないといけない」
「……なぜ?」