「胎児を犠牲にするなんて……」
これまでの失敗作を、胎児を使って処分してきたというのなら、どれほどの命が奪われてしまったのだろうか。
そう考えるだけで怒りが込み上がってくる。フェイは必死にそれを抑えた。
「漆黒のワイバーンも、それ以前の失敗作同様に、胎児と共に消えるはずだった」
「……消えなかったのですか」
「ああ。先ほども言ったように、ヤツはまだ眠り続けている。それはつまり、生きているということだ」
「ですが、胎児を犠牲にして、漆黒のワイバーンも共に消えるはずでは……」
刹那――フェイはある事に気付く。
「まさか……その胎児が生きているというのか。いや、しかし只でさえ莫大な魔力の影響を受けているというのに……」
一人ぶつぶつと呟くフェイの姿を見て、国王は笑った
。
「偶然とは恐ろしいものよ。いや、これはもはや運命とでも言うべきか」
不気味な笑みに、フェイは眉を顰(ひそ)める。


