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森の奥の開けた場所にある、美しい湖。
ハープの音が、森の中にこだましている。
太い幹に背を預け、セリシアは静かにそれを聴いていた。

「此処にいたのか」

聞き慣れた声が、耳に入る。
目をやれば、フェイがいた。

セリシアの隣に腰を下ろし、ハープを奏でている彼女――グウレイグと、楽しそうに踊っている小さな羽を持った妖精――ピクシーに目を向ける。
とても、平和な雰囲気だ。

「アンネッテは今頃エルフの里に着いた頃だろうな」

フェイが言う。
おそらくね、と答えた。
ふわりと吹いた緩やかな風が、二人の頬を撫でる。

「もうすぐ、あの男の公開処刑が行われるけど、どうする? セリシア」

レクスの幹部ともいえる、顔の半分が火傷の痕に覆われている男は、三大掟を破った罰をアウリスで受けることとなったのだ。

「興味ない。あんな奴の最期なんて、見る価値もないよ」

そうか、とフェイは言う。セリシアは空を見上げた。