『君はひとりじゃないよ、セリシア。君の味方が……すぐ傍にいるから』

ディオンの声が、脳裏に響く。

 ああ、本当だね、ディオン。
 君の言っていたことは当たっていたよ。

「セリシア、どこも怪我してない?」

心配そうにアンネッテは見つめる。ディオンの血で染まった手で、セリシアは左目に触れた。

「左の視力を失っただけ。……こんなの、ディオンに比べたら全然ましさ」

ぎゅ、と唇を噛み締める。
アンネッテは何て返せばいいのか、分からなかった。

「……僕は二人にひどいことを言って、傷つけた。なのにどうして、心配したりするの。放っておけばいいのに……」

ぽつりと呟いた。

「大切な仲間を心配するのは、当たり前だろう。放っておくなんて、出来やしないさ」

フェイが言った。
セリシアのもとへ行き、髪をくしゃくしゃ、とする。
胸がきゅっと締めつけられた。

「此処にディオンのお墓を作ろう。あの家はお前たち二人の家でもあるから、近い方がディオンも喜ぶだろう」

そうね、作りましょう、とアンネッテも言う。


 ああ、ディオン。
 僕は今、嬉しいと感じているよ。

ぽろぽろと、セリシアの瞳から再び涙が零れ落ちる。
静かに、口を開(ひら)けた。

「ありがとう」

フェイとアンネッテは、優しく微笑む。
セリシアは太陽の石(サンストーン)のペンダントを首から掛け、ディオンを見つめた。

 よい夢を、ディオン――。