「君はひとりじゃないよ、セリシア。君の味方が……すぐ傍にいるから」
「でも…!」
「お願い、セリシア。どうせ殺されるのなら……僕は君に殺されたい。その最後の願いを、叶えて」
セリシアは強く唇を噛み締める。
震える手で、短剣を抜いた。
何かが、込み上げてくる。
それはひとつの粒となり、ディオンの頬へ零れ落ちた。
途絶えることなく、セリシアの瞳から涙が零れ落ちる。
ああ、よかった、セリシア。
感情がまたひとつ、戻ったんだね。
ぐさり、と短剣が胸部に刺される。
急所は、外されていた。
刃が引き抜かれた所から、血が周(まわ)りに染み込んでいく。
「嫌だ……死なないで、ディオン」
そう言ってくれるだけ、僕はとても嬉しいよ、セリシア。
太陽の石(サンストーン)のペンダントを、ディオンは握り締める。
仄かな光が、放たれた。
大切な僕の妹が、永久(とわ)に幸せでありますように――。