「ディオン、ディオン!」

肩を抱き寄せながら、セリシアは必死に声をかけた。
ゆっくりと、目を開ける。
ディオンのサファイアブルーだった左目は、右目同様スカーレットだ。
セリシアの額、そして左目を見て、ディオンはほっとする。

「うまく、いったんだね」

「ディオン、一体どうしてこんなことを……」

「僕が全てを負って死ぬ代わりに、君が助かるのなら……僕はそれを選ぶ。当たり前のことだよ」

まるで強く締めつけられたかのような痛みが、セリシアの胸の中を襲う。

「さあ、セリシア……僕を、殺して」

なっ…、と彼女は言葉を詰まらせる。

「今、人工精霊は僕の中に移っている途中なんだ。全ての力が移りきれば……人工精霊は再び姿を現す。……ヤツを消す最後のチャンスは、今しかないんだよ」

だから早く、僕を殺すんだ、と続けた。

「そんなこと出来ないよ……ディオン。君を失うなんて、嫌だ。……僕を、ひとりにしないで」

デォオンはそっとセリシアの頬に触れる。
とても、温かかった。