「その化けモノは、今どこにいるのですか」
幼体でありながらも凄まじい力を持っている、漆黒のワイバーン。
眠りから覚めてしまえば、ヤツは再び暴走するに違いない。そんな化けモノが、このアウリスのどこかで眠っているかもしれない、と考えるだけで恐ろしかった。
「それが、分からないのだ」
また、残念そうにため息をつく。
「手に負えない人工精霊は失敗も同然。そのため、ソイツを消さねばならなかった。生き残ったレクスの者たちは惜しみながらも、研究員の一人である、男の妻の母胎内にいた胎児と、眠っているワイバーンを契約させた」
「……契約など、出来るのですか?」
「人工精霊は人間と契約するように造られている。契約者がソイツを操り、思うがままに世界を壊すことが出来るためにだ」
契約者は人工精霊を体内に取り込むようになっている。
そうすることにより、誰もその化けモノの力を横取りすることが出来なくなるため。
つまり、契約者と化けモノは一心同体。
「契約者が死んでしまえば、人工精霊も共に消えてしまう。失敗作を処分するためには、胎児が最適なのだよ」
人間は、胎児の時にはまだほとんど魔力を持っていない。
むしろ胎児に魔力の影響を与えてしまえば、その小さな命は死んでしまう。


