「君の揺らいでいる思いが、何度も僕の心に伝わってきた。だけどその思いを、君は口にすることが出来ないと知っていて、僕はそれを利用してたんだ」

 愛しい、僕のセリシア。
 僕の傍にいれば、君は苦しむことはない。
 けれど実際は、君を渡したくないという僕の我が儘が、君を苦しませていた。

『僕は、君が傍にいないなんて考えたくもない』

 そう言ってくれたとき、僕は本当に、嬉しかったんだ。
 だけど嬉しいと同時に、君を縛りつけている罪悪感を抱(いだ)いた。

「……セリシア。僕が君を、守るからね。絶対に、君は死なせない」

そっとセリシアの頬に手を添え、額同士をくっつける。
漆黒の紋章が、重なった。

 僕ら二人が死ぬ以外に、人工精霊を消す方法を、僕は知っている。
 まだ人工精霊が完全には目覚めていない、寝ぼけている間にだけ、使える方法。

「君の中にある人工精霊の全ては、僕がもらうからね」

刹那――黒い光が、双子を包み込む。
セリシアの額にある漆黒の紋章が、消えていく。
ディオンの体に、激痛が走った。
彼のオッドアイが、両眼ともスカーレットになる。

「これで、いいんだ……」

 セリシアの中にある漆黒のワイバーンの力も、そしてその契約の証も、全て僕が受け取ろう。
 それが人工精霊を消す、最後に残された唯一の方法。

 僕らが双子だからこそ、出来ること――。