世界の終わりに、君は笑う




「僕らの計画が、もうすぐで……」

月は欠けていくと共に、赤みを帯びている。
どくん、と双子の心臓が大きく脈打つ――と同時に、突き刺さるような激しい痛みが胸の中を襲った。
胸元を握り締めながら、がくっと二人はその場に膝をつく。

「もうすぐですね」

クックック、と不気味な笑い声が、耳に入った。
お前は…、とフェイは胸の内で呟く。

ディオンは息を上がらせながらも、鋭くその顔の半分が火傷の痕で覆われた男を、睨みつける。
火傷の男の後ろには二人の研究員が控えていた。

「ようやく、人工精霊が――漆黒のワイバーンが、深い眠りから目覚めるのですよ。私はどれほど、このときを待ち望んだことか」

ディオンの体から、人工精霊の力である黒い霧のようなものが現れる。
そしてそれはセリシアの体に纏っていく。体中に、激痛が走り出した。

「うっ、ああぁぁぁ!」

セリシアは悲鳴を上げ、ガハッと大量の血を吐き出す。
満月が赤く染まる――と同時に、黒い霧が宙に上がりはじめた。
次第にそれは巨大な飛竜(ワイバーン)の姿となっていく。
瞳は、まだ閉じている。

「セリ、シア」

ディオンの体から、人工精霊の力が抜けていく。
今までふたつに分かれていた力が、セリシアの中でひとつに戻ろうとしているのだ。
ワイバーンの体から手のようなものが伸び出てくる。

そして、ディオンの体を掴んだ。