世界の終わりに、君は笑う





「……どうして、セリシア。どうして…!」

強く唇を噛み締めながら、胸元を握り締める。
心で会話をしている双子の声など聞こえないフェイとアンネッテは、ただじっとディオンの様子をうかがっていた。

「……ああ、フェイ・ブランデル。お前は本当に憎い奴だ。僕から、セリシアを奪っていこうとする」

ディオンの言っている意味が、分からなかった。

「けれど、たとえセリシアが揺らいでいようと、この計画をやめることは許さない。だって僕は、愛しい君のために……」

言いかけて、口を噤(つぐ)んだ。
俯いていて、ディオンの表情(かお)は分からない。

パチン、とフィンガースナップをした。
刹那――黒猫とディオンは黒い霧に覆われ、姿を消していく。

「待て、ディオン! セリシアが揺らいでいるって、一体……」

「全てお前たちのせいだ。セリシアが、お前たちと出会ってしまったせいで……」

最後にそう言い残し、彼は姿を消した。
咄嗟にフェイは走り出す。
アンネッテもまた、後を追うように走り出した。

「セリシアが、揺らいでいる……」

小さな希望を抱(いだ)きながら、二人は不気味な森を下りて行った――。