「今此処で、アイツらを殺そうか」

ぽつりと、その少年――ディオンは呟いた。

セリシアが殺すのを躊躇(ためら)ってしまうのなら、僕が、代わりに殺してやる。
僕らの計画を邪魔しようとするフェイ・ブランデル。
とても慈悲深く、愚かな男。
そして僕からセリシアを奪おうとする、憎い男。

「やっぱり、邪魔者は今殺しておこう」

不気味に笑いながら、ディオンは二人の前に姿を現した。
突然のことに、二人とも驚きを隠せない。
右目のスカーレットを見て、フェイは静かに口を開(ひら)ける。

「……ディオンか」

「あれ、どうして分かったんだい? ……ああ、そうか、僕らの過去を視たってことか」

「ディオン、全ての人間を消すだなんて計画はやめるんだ。それにお前たち精霊使いは、元は……」

「精霊だった、って言いたいんだよね」

クスクスと笑いながら、フェイの声を遮った。

「知って、いたのか?」

「もちろん。ああ、でも、セリシアはまだ知らないよ。確かそれって、人間を守ろうとし、消
えてしまった精霊だけが、精霊使いとなり誕生するんだっけ」

それで、とディオンは続ける。

「お前たちはもしかして、僕らが精霊だったときの記憶を思い出せば、この計画をやめるんじゃないか、とでも思っているわけ?」

フェイが答える前に、無駄だよ、と言う。