( あら、あなたは…… )
金糸の髪を靡かせながら、ハープを奏でている彼女――グウレイグは、少し驚いた様子でフェイに目をやった。
美しい湖がある、森の奥の開(ひら)けたその場所は、フェイが初めて妖精を見た場所でもあり、またセリシアと共に旅をすると決めた場所でもある。
「アンネッテが……このエルフが、危険な状態なんだ。グウレイグ、何か助ける方法を知っているなら、教えてほしい」
ハープを置き、彼女は近寄って来る。
( 過去を視たのね。あの魔法は体への負担が大きいから、禁忌とされているのに…… )
エルフにしか使えない魔法。
けれどそれは、使った者の命を奪いかねない、恐ろしいもの。
( でも、まだ助かる可能性はあるわ。その子を、こっちに連れて来てちょうだい )
グウレイグは湖水に浸かり、アンネッテを目の前に寝かすように指示する。
フェイは言われた通りにした。
( あなた、薬草には詳しくて? )
一通りは知っている、と答えた。
だったら安心ね、と言って、彼女は続ける。
( カミツルとヘンルーダを出来るだけ多く摘んできて )
こくりと頷いて、フェイはすぐに探しに行った。
グウレイグは深呼吸し、アンネッテの首の後ろに両手を添える。
刹那――湖水が、彼女の手に、そして体に纏(まと)う。
数分間、そのまま手を動かさず、じっとする。
そして次は脇の下、足のつけ根、といった順番で、同じように数分間動きを止める。
しばらくして、ふぅ、と息を吐いた。
彼女の体を纏っていた湖水が、湖に戻って行く。
アンネッテの体は、まだ少し熱い。
しかし、先ほどよりはましだ。
( やっぱりこれだけじゃ、下がりきらないわね )
グウレイグが呟いた、丁度そのとき、フェイが戻って来た。
手の中にある薬草の量に、彼女は満足そうに微笑む。
これだけあれば十分ね、と言った。