「そしてな、フェイよ。人工精霊は、もうすでに生み出されているのだよ」
フェイの表情が凍りつく。
「しかしソイツは、今はまだ眠っておる」
化けモノについて、国王は話を続ける。
「十五年前、すでにレクスは人工精霊の研究を行っていた。そして研究者たちは試行錯誤を重ね、一体の人工精霊を生み出すことに成功したのだ」
液体で満たされたガラスケースの中に生まれたのは、漆黒の飛竜(ワイバーン)。
「幼体(ようたい)にして、すでにワイバーンの力は凄(すさ)まじかったのだよ。ヤツが成体となり目覚めれば、この世界を破壊することすら出来てしまう。……そう確信されていたのだがな」
そう言って、国王は黙り込む。
『精霊らしきモノを造ることは可能だ』
ディオンが言っていたように、レクスは人工精霊を可能にした。
そして三大掟を破ってしまった。
それは今まで一線を引いて存在してきた人間と精霊の間に、亀裂が入ったも同然のこと。


